私はトウキョウX
こんにちは! 私たちはトウキョウX(トウキョウ・エックス)といいます。豚にXだなんて変ですか?
それは、おいしい肉質の豚をかけあわせてできたという意味でX。よりよい品質を目指して進化していくという意味でX。さらに東京の銘柄豚から世界の都市型養豚のモデルを模索していこうという意味でX。 というわけで、つけてもらった名前です。みなさんに親しんでもらえるように早くなりたいと思っています。
私たちが産声を上げたのは、旧東京都畜産試験場(現在は(公財)東京都農林水産振興財団青梅畜産センター・以後青梅畜産センター)です。北京黒豚、バークシャー種、デュロック種という優等生のお父さん、お母さんから、良いところばかりを受け継いで生まれてきました。豚ではありますが、ちょっと鼻高々なのです。
生まれたてのほやほやの時は、1kgちょっとの体重しかありません。普通兄弟は8匹ぐらいで、皆で競って飲んだお母さんのおっぱいの味は、今でも忘れません。1ヶ月ぐらいで体重も5kgほどになり、今度は離乳食が始まります。そして、さらに2ヶ月ぐらいすると体重も20kgほどにまでなって毎日2~3kgも食べちゃいます。
いっぱい食べるので、もちろんいっぱいうんちもします。これは野菜さんたちのための肥料にしてもらってます。こんなものでもお役にたてていると思うとうれしいです。
こうやって私たちが成長していけるのも、世話をしてくれている農家のおじさん、おばさんがいてくださるからなのだなあ、毎日ブヒブヒと感謝の気持ちを表しています。あ、それから私たちは東京都家畜保健衛生所の獣医さんたちに、健康診断もしてもらっているんですよ。だから、いつだってみんな元気です。
私たちは、健康でおいしいものを食べて、伸び伸びと生活して、しかも大切に育ててもらっているから、とってもおいしいお肉になれるらしいんです。試食したみなさんから、上品な香り、口どけのよいさっぱりとした脂肪、ほどよい柔らかさのお肉等々、お誉めの言葉をたくさんいただきました。どうもありがとうございます。
皆さんの味覚をよろこばせることができ、しかもみなさんの体の中で命のひとかけらになれるんですね。なんだかとっても不思議だなあ。
トウキョウX? TOKYO X?
トウキョウX は合成系統豚としての豚自体を表し、TOKYO X は食肉となったトウキョウXを表します。
TOKYO X 物語
トウキョウX が開発されたところは?
平成2年に、のちにトウキョウX となる豚の品種改良が始められたのは「東京都畜産試験場」ですが、平成17年、東京都の機構改革があり、畜産試験場は(公財)東京都農林水産振興財団に移管されました。その時に研究部門は財団内の東京都農林総合研究センター畜産技術科に、トウキョウX の維持増殖をする部門は財団内の事業課青梅畜産センターとなりました。
開発の目的
近年増加の傾向をたどる外国産輸入豚肉と差別化できる、東京の地域特産豚肉の開発を目指して「トウキョウX」は生まれました。 旧東京都畜産試験場では、これに先立って系統豚「エド」を開発してきましたが、差別化できる豚肉としては十分ではないため、さらに高い品質を持つ「トウキョウX」の登場が待たれていたのです。 これにより東京の養豚を活性化させ、東京都民の食生活を豊かにするべく、また安心で安全な食材の提供を行うべく開発は進められました。
開発の方法
平成2年4月~平成9年3月まで、7年間をかけて開発されました。 新しい品種系統をつくる上での基礎品種として、北京黒豚、バークシャー、デュロックの3品種を使用、これらの交配により雑種第一代を作成し、この集団をもとに5世代に渡って選り抜かれた品種が、一つの系統「トウキョウX」として確立したものです。
トウキョウXの特徴
平成9年7月、社団法人日本種豚登録協会・系統認定中央委員会より、合成系統豚「トウキョウX」として認定されました。肉質は、舌触りがなめらかで風味、味わいに優れ、脂肪の質が優れたものとなりました。 繁殖成績や発育成績は、一般に飼われている豚より、少し劣る程度です。豚の毛色は黒、茶、黒と茶の斑などです。
TOKYO X の理念
東京SaBAQ
どちらかといえば、経済効率のみを追求してきた今までの畜産。
これを見直し、動物の健康に配慮して肉のおいしさと安全性にこだわってたのがTOKYO X です。 こだわりを支える「安全性(Safety)」「生命力学(Biotics)」「動物福祉(Animal Welfare)」「品質(Quality)」 の4つの理念。
この理念をもつ「東京SaBAQ」の考え方に基づき、TOKYO X は育てられているのです。
Safety 安全、だから安心です
豚の健康状態を良好に保ち、病気への感染を防ぐよう努めています。 肥育期間は抗生物質を含まない指定飼料を使っています。
Biotics 本来の生命の力を活かします
TOKYO X の美味しさのもととなる脂肪交雑(いわゆる“サシ”)をより引き出すために、独自の栄養配合による指定飼料を3ヵ月以上与えることとなっています。
Animal Welfare 快適な飼育環境の中で育てます
動物本来の生理機能に沿った飼育管理を行い、より健康な豚に育つよう心がけています。ゆったりとしたスペースと充分な換気、採光を保った豚舎で育てています。
Quality 3品種の交雑による新しい品種です
脂肪の質と味が良い北京黒豚、筋繊維が細かく肉質が良いバークシャー、脂肪交雑が入るデュロックの3品種から、それぞれの良いところを取り込んで改良しました。
安心・安全な生産体制
生産について
青梅畜産センターで原種の豚を飼養し、トウキョウXの生産者に配布、増殖して生産しています。 生産組合では、品質の維持や安全性の確保などのため飼料や飼育方法の取り決めを行い、厳しい管理体制の元で生産に取り組んでいます。 また、都内だけでなくTOKYO Xの需要に応えるためトウキョウXの生産体制に賛同いただける農家にも生産をお願いし、生産された豚はすべて東京へ出荷され流通しています。 現在、宮城県、茨城県、群馬県、山梨県で生産されています。生産地が都外というだけで、トウキョウXの飼育方法・飼料・トレーサビリティーなどすべて都内農家と同じ体制で飼育しています。
トレーサビリティシステムできちんと管理
トウキョウ X は全国に先駆けて、どのように生産され加工されたかという履歴管理(トレーサビリティ)を導入し、生産・出荷されています。また、専用の検索ページ(TOKYO X トレーサビリティシステム)を通じ生年月日、出荷日、生産農場の情報などを皆さんに公開できるようにしています。なお、一部の小売店では精肉パックに生産情報の公開につながるQRコードの添付も行っています。
さらに、このトレーサビリティの情報について科学的に検証するために遺伝子検査を行っています。
生き物の体の中には、その生き物の設計図を描く遺伝子が入っています。この遺伝子は、人間の指紋が各人で違うように、各々の生き物で皆違っています。現在、雄豚の遺伝子型を登録してデータベース化を行い、精肉の遺伝子型を調べて親子判定をしています。親子関係を検査することで、トレーサビリティの信頼性確保につながります。
青梅畜産センターでは年間を通じ任意の販売店舗から精肉を買い取り、遺伝子検査を実施しています。この取り組みは偽装表示などの防止に役立ち、みなさんにより安心して食べていただける一助になるとともに、生産から流通・販売までの一貫したTOKYO X の取り組みの信頼の証となります。
また、(公財)東京都農林水産振興財団東京都農林総合研究センター畜産技術科では、精肉の遺伝子解析により、その精肉がTOKYO X か三元交雑豚等の一般豚かどうか判別出来る技術を開発しました。将来的には、この技術を活用してより精度の高い判別を実施していきたいと思います。
(ただいま調整中です)飼育の特徴
トウキョウX の飼育管理で特徴的であるのが、1頭1頭の耳標での管理です。
みなさまに届けるTOKYO X がどのような場所で生まれ、どのような農家の方が飼育していたのか?というトレーサビリティを行うのみではなく、青梅畜産センターでは、さまざまなデータを活用・分析することにより、さらなるトウキョウX の改良に役立てています。